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写真と文 石川文平

 

No.9「プリテック・ステージ」1995年11月号掲載

 

マルチメディア交番

コンピュータ用語が増えたせいか、最近カタカナ語が気になる。貿易摩擦が騒がれているが、言語の世界は輸入に積極的なようだ。

しかし、よく考えてみると輸出をしている日本語も最近増えている。SAMURAI(侍)、RIKISHA(人力車)、KARATE(空手)などは昔から知られているが、 EKIDEN(駅伝)、NOMO(野茂/おっと、これは人名)、SANSIN(三振)、などは最近の輸出語である。スポーツ用語ばかりでなくご存じKARAOKE(カラオケ)は最近のヒット輸出語と言えるし、KAMISIBAI(紙芝居)も米国の外来語として幼児教育に取り入れられているそうである。

中でも最近話題になっているのがKOBAN(交番)である。意外にも、交番というシステムは日本独特のものらしい。アメリカでは現クリントン政権での評価が高く、地域によってはKOBANの設置が増えているそうだ。

交番と言えば、仙台にハイテク交番があるのをご存じだろうか。テレビ電話式にモニターと会話する無人の交番である。何事にも好奇心旺盛な私は、さっそくマルチメディア交番に入ってモニターの用件項目を指で押すと、お巡りさんから応答があった。本署に繋がっているらしく、行きたい場所を聞くとモニターに地図を映し出して説明してくれたが、カメラの解像度が悪いのかあまり良く見えない。地図がよく見えないと言うと、ファックスを送ってくれた。これは鮮明で、なかなか便利であった。

この交番、まだテストケースなのだろうが、宮城県警のマルチメディア時代に向けた積極的な実験として評価出来る。但し、無人交番が本来の交番機能を十分満たすかどうかはこれからの課題であろう。

 

日本の交番機能の特徴は、”お巡りさん”の愛称が示すように、地域密着型コミュニケーションによる、未然の犯罪防止である。

アメリカは銃による危険犯罪がエスカレートし、警察官が身を守りながらの警備機能が重視されてきた。起こった犯罪を処理するだけの限界感が、未然の犯罪防止の価値に大きな可能性を見い出したに違いない。

地図を教える、落し物の面倒をみる、歩いて又は自転車でパトロールする、電車賃が不足ならば貸してもくれる、地域密着型のこの交番コミュニケーションが、犯罪の未然防止に繋がっているのは確かなようだ。日本も、銃による犯罪など危険犯罪が増加している。危険犯罪がこのまま増加して行った時、やはりアメリカのように警備機能を重視し始めるのだろうか。犯罪防止と危険との綱引きが始まっているのかもしれない。危険犯罪先進国のアメリカがKOBANを設置し、血の通ったコミュニケーションで犯罪を少なくしたという結果を期待したい。

最近の日本は、工業製品ばかりでなく、文化も輸出し始めたと言える。いや、日本文化の良いところを欧米人が気付き始めたと言ったほうが正しいのかもしれない。西洋の物まねばかりでなく、日本文化の価値に日本人自身がもっと気付き、良い点は自信とプライドをもって世界とコミュニケーションするべきであろう。

コンピュータは事実分析や伝達に人間の能力の何万倍もの力を発揮する。この便利さを利用して、どれだけ血の通ったコミュニケーションを生み出せるかが、システム関連の開発者に課せられた課題ともいえる。

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