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写真と文 石川文平

 

No.56「プリテック・ステージ」1999年11月号掲載

 

ホログラフィー

■自分の見ている赤い色と、他人の見ている赤い色は同じなのだろうか。言葉は同じ赤という表現を使っていても、相手の見ている色は自分の感じる緑色かもしれない。そんなことを結構真面目に考えたことがあった。変な奴だと思われてはと、あまり人には言わなかったが、最近友人と話していたら同じことを考えていて話しが盛り上がった。何かの本にも似た話しが載っていた。意外に多くの人がこんなことを考えているようだ。■この事とはちょっと違うが、ホログラフィーは何も存在しない空間に写し出される立体映像である。ディズニーランドに行った人は、ホログラフィーのお化けや悪魔達が飛び出してくるアミューズメントを見たことがあるかもしれない。このホログラフィーを映画やテレビに応用したら21世紀の画期的なメディアになるだろう。何しろ、さわろうと思って手を触れても何もない。なんとも不思議な映像なのだから。ビルの屋上から投影して夜空に巨大な立体映像を写し出す、空間コマーシャルなんかも面白いかもしれない。突然夜空に巨大な人間が現われて踊りだしたら、広告効果も大きいと思う。しかも、何かに投影する必要がないのだから、スペース料がかからない。■このホログラフィー、ちょっと不思議な性質がある。映像の元は光の干渉縞で作られたホログラムというフィルムなのだが、そのフィルムの一部分を切り取って映像を作っても、全体像が浮かび上がるのである。ちょっとだけなら、などという半端なことではない。半分にしても、十分の一にしても百分の一にしても、像はぼけるが全体像を再現するのである。この理論の発見者、デニス・ガボール博士は勿論ノーベル賞を受賞した。そして、この理論は物理学ばかりではなく医学の分野にも影響を及ぼしたのである。脳の記憶のメカニズムを解明する理論で「脳ホログラフィー理論」と言うのだそうだ。いろいろな実験をしていくと、視覚ばかりでなく、触覚も脳ホログラフィーが作り出すという仮説があるらしい。それを更に発展させていくと、この世の中は全てホログラフィー、つまり幻映であるということにもなるのだそうだ。 「な、何だって、この世の中が全て幻映だって?ならば、この私自信はいったい何なんだ。」と、言われても私にも分からない。■この仮説さらに発展させていくと、宇宙全体がこの仕組みで動いているということにもなるらしい。ディズニーランドのスペースマウンテンも比較にならないファンタスティックな発想である。人生いろいろだから、夢であってほしいと願ったり、夢ではないだろうかと思ったりもする。都合に合わせて世の中ホログラフィー論を信じるのも面白いかもしれない。ただし、自分の体をつねってみても、痛いから現実だとは言えないということになりそうだが。

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