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写真と文 石川文平

 

No.52「プリテック・ステージ」1999年7月号掲載

 

パラダイム・シフト

■最近ニュートリノという極小微粒子について物理学界で大騒ぎしているようである。いったい何がすごいことなのかよく分からないのだが、とにかくこの素粒子に重さがあるか無いかで、膨張している宇宙が収縮に転じるかどうかの大ごとらしい。ニュートリノとは、物体の最小単位の原子を構成する素粒子の最も小さなもの・・・えーい何だかややこしくなってきたが、ともかくその小さな奴が大きな宇宙に影響を与えるらしい。■宇宙といえばその昔、地球の回りを宇宙が回っていると考えていたのであった。天動説というやつである。地球が宇宙の中心ではないと気付いたことは、大変なことで、カルチャーショックなのだが、当時の宗教裁判では、そんなことを言うやつは有罪だ!と牢屋に入れられてしまったのである。あのガリレオ・ガリレイさんの話しだが、庶民はといえば、今のニュートリノじゃないが、どっちが回っていようが今日食う飯に影響があるわけじゃあないと、あまり興味を示さなかったようである。まあ、何事もそんなものなのだろうが、事の重大さに気付くのはそれからしばらくしてからなのである。ガリレオの事件のあと50年程で、あのニュートンが近代科学の基礎を築き、ここからヨーロッパは大きく変化を始める。つまり、この近代科学がものの見方や考え方を変え、産業革命につながる文明の進歩をもたらすのである。■迷信や魔女を信じていた社会が、宇宙を知ることで価値観が変わり、近代科学と合理思想を生み出したと言える。このような社会的価値観の変化をパラダイムシフトと言うそうだ。日本の明治維新もある意味のパラダイムシフトと言えるだろう。鎖国の中で熟成された日本の文化を殆ど投げ捨てての舶来崇拝。その結果日本は変身した。そこには劇的な価値観変化があったのである。そしてまた、21世紀に向かって世界が大きく変わると言われている。新世紀なのだから世の中変わるに違いないとは思うのだが、いったい何がどう変わるのだろうか。 消費経済や環境汚染など変えるべき問題点は山ほどあるが、パラダイムシフトといえる変化はそう簡単には起らないだろう。近代科学も、明治維新も社会を動かす起爆剤があったからこそ変化したのである。■21世紀のパラダイムシフトは何が起爆剤になるのだろうか。いま話題の素粒子の世界ではニュートン力学は通用しないのだそうである。地球上の物理学が通用しない世界。素粒子の世界を極小宇宙と呼ぶ学者もいるそうだ。300年前、広大な宇宙のしくみを理解したことでパラダイムシフトした人類が、今度は極小の宇宙を理解することで新たなパラダイムシフトをすると言う意見は少しロマンチックすぎるであろうか。

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