サイトマップメールhome

写真と文 石川文平

 

No.43「プリテック・ステージ」1998年9月号掲載

 

ビッグバン

■宇宙創成の大爆発のネーミングがビッグバンとは、ちょっと軽すぎるのではないかと思っている。日本語で言えば”でっかいドカーン”、あるいは単に”大爆発”ということになる。宇宙が成り立つ程の大爆発なんだから、ネーミングにこだわって超真空爆発とか宇宙創成爆発などと言ってほしい。ちなみに、辞書の日本語訳には宇宙爆発起源と出ていた。この辺は日本人的こだわりかもしれないが、このビッグバンに世界経済は最近何かと騒がせられている。■イギリス国会議事堂の大時計はビッグベン。宇宙創成期の大爆発がビッグバン。どちらも似てるが、金融ビッグバンはこのビッグバンになぞって、ビッグベンのイギリス政府が行った金融大改革を呼んだのが始まり。それから10年以上も経って、日本の金融ビッグバンが始まった。来るぞ来るぞと言われながら、今だにドカーンとは来ずに、ハードランディングかソフトランディングかと論議中である。こちらの大爆発に宇宙のビッグバンをあてるとは逆に大袈裟なネーミングだと思うが、それ程覚悟の必要な大改革だと言うことだろう。 ■いたる所でビッグバンが起き始めている。日本の航空業界も規制緩和がビッグバンと呼べるような変革をもたらした。スカイマーク・エアラインという会社がオープンして、従来の半額で東京福岡間を飛ぶ。サービスは最小限のようだが、過剰サービスは誰も望まない。飛行機はもはや特別なものではなく、電車と同じ感覚で乗れればいいのである。この新会社に追随して、サザンクロスという沖縄空路やエア・ドゥーという北海道空路の会社もオープン予定だ。 しかも、これらの航空会社は全て業界外からの参入である。エア・ドゥーの創設者は養鶏所の経営者だそうだ。どの新設航空会社も不況の中での資金集めに苦労している。何とか経営を維持してほしいと願うのは、判官びいきの日本人的感覚だろうか。実は私もインターネットでエア・ドゥーの出資を申し込んでしまった。■航空業界に限らずビッグバンはまだまだある。印刷業界も放送業界も出版業界も通信業界も数え上げればきりがない。つまりは経済ビッグバンと言うことになる。社会主義は崩壊したが実は自由主義も崩壊し始めたと言われる。人類は地球資源に限界があるならと、科学の力で代替物を作り出して来たが、その結果大量のごみとダイオキシンなど複合汚染が発生した。科学万能主義も見直され始めた。どうやら人類は価値観を変えないかぎり行き詰まるのは間違いなさそうだ。すると、これからやって来るのは価値観ビッグバンかもしれない。物質的満足から精神的満足に、自分の為から人の為に、右肩上がりから右肩下がりに。価値観の変革こそ宇宙のビッグバンになぞる程の大改革かもしれない。■宇宙のビッグバン理論は20世紀の科学が生んだ広大な推論だ。宇宙がビッグバンから始まったのであれば、ビッグバン以前はどんな状態だったのだろうか。ビレンキという学者はビッグバン以前の宇宙を「無」という状態で説明した。ホーキングはその「無」から発生した宇宙は「虚」の時間を通過して生まれたと推論する。禅問答の様だが科学は尽きるところ、古代の人達が既に考え抜いた思想に行き着くのかもしれない。

 |INDEX|

 

*このHome pageに掲載している写真及び文章の著作件は
石川文平に帰属します。無断転載を禁じます。