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写真と文 石川文平

 

No.42「プリテック・ステージ」1998年8月号掲載

 

バーディング

■夏休みシーズンである。世の中景気が悪いので海外旅行は控えめらしいが、それでも海山のリゾートは賑わっているようだ。海でも山でも自然の中では野鳥の姿を必ず目にする。あまりお金をかけずに出来るアウトドアレジャーとしてバードウォッチングが流行っているようだ。■バードウォッチングを最近バーディングとも言う。長距離を歩くのはトレッキング、洞窟探検をケイビング、ゴムボートでの激流下りをラフティング。単語にingを付けた造語がアウトドアの流行の様である。中でもバーディングはお金があまりかからない。道具は双眼鏡だけでOK。カメラ店に行けばすぐに手に入る。値段や機能は1万円もしない位のシンプルなものをお薦めする。倍率は8倍程度、大きく見れるからいい訳じゃあない。これでバーディングの準備完了。簡単である。あなたも明日からバードウォッチャーの仲間入りだ。■双眼鏡を手に入れたら、先ずは使い方の練習である。何しろ双眼鏡で物を見ると、突然遠くの木が目の前に迫って来るのだから、自分がいったい何処を見ているのか訳が判らなくなる。こつは、まず見たいものに対して顔を真正面に向け、そこに双眼鏡を当てる感じにして覗くことだ。 自分が見たいものを一瞬に双眼鏡で捕まえられるようになれば合格。何しろ相手は鳥なのだから、ぐずぐずしてればあっという間に飛び去ってしまう。シジュウカラという鳥は都会でも多く、しかも奇麗な鳥だから見ても楽しい。スズメほどの大きさで、動きが早く落ち着かないのが初心者には玉に傷と言ったところだろうか。同類のヤマガラやキツツキの仲間のコゲラという鳥も郊外の山林には沢山いる。これらの鳥は混合の群れをつくって木々を渡り歩き、いや渡り飛んで餌をとる。■夏の早朝、高原の森や林の中に出かけると、これらの小鳥が群れになって木々を移動しながら近づいて来るのには感動する。チチチッ、ツツピー、などと控え目だが賑やかな声でさえずりながら餌をとる。段々鳴き声が近くなると、木々の枝の間を何羽もが行き来しながら、まるでジャングルジムで遊ぶ子供達の様な元気な群れの移動が見えてくる。来たきた来たっ。体を自然に溶け込ませる様にじっとしていると、自分の周りを小鳥達の群れが移動する。直ぐ目の前の木の枝にコガラがぶら下がって餌をさがす。こちらの木の幹にはギー、ジューッといった声を出しながらコゲラが螺旋状に移動して餌をとっている。突然私の胸元の双眼鏡にヒガラがとまった。びっくりしたがじっとしていると顔を右に左に傾けながら私を珍しげに眺めた。しばらくすると納得したのか、すぐ横に出ていたクヌギの枝にとまり餌を啄みながら移動していった。こんな状況に出会った時には双眼鏡は必要ない。肉眼で十分楽しめるし、その方が自然の中の自分がはっきり判る。■鳥が自分に止まってくれるという体験はともかくとして、自分が自然の一部なのだということを感じることが出来たら、もうあなたは優良バードウォッチャーである。世の中不況で財布の中はシジュウカラなどと言っていないで、忙中の閑ではないが、不況中の幸いとばかりにバーディングにでも出かけてみてはいかがだろうか。自然の中でのリフレッシュは、仕事の発想にもつながるに違いない。

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