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写真と文 石川文平

 

No.29「プリテック・ステージ」1997年7月号掲載

 

Xゾーン

■「Xゾーン」という週刊誌が売れているようだ。テレビ宣伝もしているのでご存じの方が多いと思うが、イギリスで編集されており日本ではディアゴスティーニ・ジャパンという会社から発行されている。昔から不思議現象は人々の興味を引くところで、「学校の怪談」などは小学生の話題の本にもなった。「不思議大好き」というコピーは、コピーライター糸井重里が書いて世に名前を知られるきっかけになった名コピーであるが、いつの時代も人々は不思議が大好きなのである。科学が進み色々な現象が解明されたり不可能が可能になってくると、不思議現象が益々不思議に思えてくるからそれこそ不思議である。■科学的解明や人間的常識では理解できないゾーンをXゾーンと呼ぶ訳であるが、そんなふうに考えてみると超能力やU・F・0ばかりでなくごく身近なものにも不思議ゾーンは沢山存在する。わが家の不思議ゾーン85才になるお婆ちゃんは、いつもは遠い耳が場合によって突然よく聞こえるようになるし、今食べたご飯をまだ食べてないなどとも言い出す。お婆ちゃんならではの不思議ゾーンである。実を言えば我が女房も超能力を持っているのだ。だから私の都合の悪い言い訳などはすぐ見抜いてしまう。まあこの程度は他愛ないが、総会屋に何十億円もの不正融資をしていながら「私は全く知らなかった事」などと平気でうそぶく金融トップの答えなどは、政治家の答弁とも似た異次元の住人の会話である。 ■最近騒がれているクローン研究やバイオテクノロジーも未知数要因を含んだ不思議ゾーンと言える。バイオ応用で色々な食物が作り出されているようだが、それを長期間食べ続けて本当に問題ないのかと不安が生じる。バイオの効用は味や栄養価など消費者にメリットを感じさせるものもあるが、多くは収穫量や害虫駆除効果など生産者側のメリットが主体になっている。これまで我々は農薬という手段を使うことで、手間の掛からぬ大量生産を実現して来た。その替わり、その効果と引き替えに自然の生命バランスを壊しても来たのである。今や地球は温暖化、酸性雨、砂漠化、産業廃棄物、森林伐採、オゾン層破壊、等々自然サイクルが崩れることによっての多くの環境問題を抱えている。これらの現象も少し前の世代の人達の目にはXゾーンに写るであろう。■同じ視点から見るならば、コンピュータ社会は近年最大のXゾーンと言えるのかもしれない。人間の生理とは全く一致せず極度に正確で、極度に高速で、極度に大量なデータを処理するコンピュータが中心になった世界。そのコンピュータはさらに公衆回線を使って、インターネットという不可解なゾーンを築き始めた。ここではネチズンと呼ばれる仮想市民がバーチャル空間で情報交換や売買をする。コンピュータウィルスが増殖しクラッカーと呼ばれるやからの犯罪も発生する。こんな摩訶不思議な世界を我々は既に当然のものとして理解するようになった。そして、いつかこのバーチャルゾーンから現存の世界を見たとき、どちらが通常のゾーンなのか判断出来なくなるのかもしれない。

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