サイトマップメールhome

写真と文 石川文平

 

No.2「プリテック・ステージ」1995年4月号掲載

 

天災・人災

人間が、いかに優秀な頭脳で科学力を持っても、天災には勝てない。この度の阪神大震災は特に巨大な天災だったと言える。震災後45日目に神戸を訪れたが、その状況は、テレビ等から得ていた印象を遥かに越えた、衝撃的なもの であった。亡くなられた方に心からご冥福をお祈りするとともに、1日も早い 復興を願ってやまない。
天災に対して人災という言葉がある。人間の不注意 や、政策の未熟等が引き起こした災害のことである。例えば、防災対策を怠っ た結果、災害が拡大した様な場合等を人災と呼ぶ訳だが、少し解釈を広げて、 人間の行為が原因で起きた災害を人災と呼べば、最近問題の現象を上手く整理 出来る。
今年終戦50周年を迎えるが、この括り方で言えば、戦争は代表的な 人災である。先日東京で起きた地下鉄サリンガス事件は、許し難い行為である が、これも人災と呼んでもよいのではないだろうか。何の罪も無い人々に対す る無差別殺人は、戦死や空爆死よりも納得出来ないものが残る。天災も人災も 、当事者にとっては晴天の霹靂であり、被災者にしか理解しあえない多くの思 いがあるはずである。
神戸の街は私にとって想い出も多く、閑静な芦屋や、 灘の辺りは特に好きな場所であった。被災地を訪れ、変わり果てた街を歩くと 、造り酒屋の並ぶ灘の辺りにはまだプ―ンと酒の臭いが漂っていた。数年前、 搾りたての源酒を飲ませてもらったことのある、老舗の蔵元を捜してみたが、 白い漆喰の塀も、源酒を戴いた古い倉造りの建て物も全て崩れ、大きな酒のタ ンクだけが、何本も林立していた。
神戸は近世、地震に襲われた事が無い。 だから神戸には地震が起きないと、殆どの市民が信じていたようだ。倒壊した 高速道路の映像は、多くの人にショックを与えた。道路や電車の不通がいかに 物流や産業の支障になるか、再認識させられた。そればかりでなく、停電によって「あらゆる情報がストップした。
震災当時欲しかったのは、交通よりも情報であ ったという。電気が通じた所では、パソコン通信が貴重な情報源として活躍したが、 一部の経験者だけのまだ狭いネットワ―クである。 天災も人災も、いつ起こるか分からないから恐ろしい。地下鉄サリ ン事件も、たまたま居合わせただけで何人もが不運な目に会った。一部では、 ある宗教組織の思想的犯行ではと取り沙汰されているが、現在のところ真相は まだ不明である。
少し視点を変えれば、人災が引き起こす問題の大きさに気付 く。環境破壊は最も大きな人災ではないだろうか。
人間の頭脳は、自分たちにとって都合のよい事のみ、追求し開発して来た。コンピュ―タを作り、フロン ガスを開発し、男女を生み分け、遺伝子操作までも可能にし、何れは天候まで 左右できるようになるかも知れない。地震や台風など自然現象は、人間にとっ ては災害をもたらすが、地球にとっては生きる鼓動である。
人間が天候まで左右するようになった時、果たして、人間にとって有益な結果ばかりを生み出すのだろうか。私の未熟な頭脳では、予測することは難し過ぎる。
日本人の恐い物ベ ストフォ―、地震、雷、火事、親父は、いずれ、人災が最も恐いものだと気付 き、環境破壊、情報停止、思想洗脳、そして母ちゃんという言葉にでも替るの かもしれない。

 |INDEX|

 

*このHome pageに掲載している写真及び文章の著作件は
石川文平に帰属します。無断転載を禁じます。