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写真と文 石川文平

 

No.17「プリテック・ステージ」1996年7月号掲載

 

怪談

■夏ともなると、必ず話題になるのが怪談である。四ツ谷怪談や化け猫の話しは最近あまりうけなくなったが、衰退の一途をたどる日本映画界は、毎年何処かが昔ながらの怪談映画を制作している。一昔前は、暑い夜に縁台をだして、近所の人との夜話しに、怪談は欠かせない材料だったのだろうが、テレビやクーラーの普及で、蒸し暑い夏の夜に小声で怖い話しを語り合う情景は、過去の風物詩となってしまったようである。風鈴や、かき氷も、クーラーの無い環境でこそ存在価値があるのであって、暑い夏の日に「氷」の旗を見つけて、喉を鳴らしながら店に入ったが、クーラーのきいた店内で、思わずコーヒーをたのんでいる自分に苦笑いをする。■最近は、お化けの怪談ではなく、社会的怪談とも言える怖い話しや怪しい話しを沢山耳にする。チェルノブイリ原発事故などは怖い話しの典型であろう。HIVや狂牛病などは、科学的に解明されている様な、いない様な、現代社会の怪談とも言える。日本でも非加熱製剤、住専問題、消費税と、このところ行政の怪談が目白押しである。デジタルの真髄、コンピュータにも不思議な話しは沢山ある。コンピュータウィルスは何時出てくるか判らないお化けで、コンピュータ怪談の代表格かも知れない。潜伏期間があって発病するタイプが多い様だが、有名なのはバレンタインデーに発病するバレンタインウィルス、最近は特に、インターネットの普及でウィルスの感染率が極端にアップしたそうだ。中でも恐れられているものに、多発性ウィルスとも言える怖い奴が広がりつつあるようだ。一旦入ると、あちこちのデータを虫喰い状態に壊してしまうので、何処に病巣があるのか判らないという、始末に悪い奴である。それに対抗したワクチンも作られているわけであるが、いたちごっこをやっている点では、パチンコの怪談、プリペイドカード問題と似ている。 ■ネットワーク化が進むと当然お金の流通もそれに対応した形が必要になってくる。デジタルマネーという、お化けやウィルスが好みそうな構想がそれであり、アメリカの銀行が中心にシステムを開発した。このシステムが今後インフラとして定着すると、世界の金融が同一システム上で動くかも知れない。しかも、このデジタルマネーの知的財産権を主張し、認められる可能性が強い。日本は事の重大性に気付いてその無効を訴えている。日本がデジタルマネーシステムに乗るためには知的財産権料を支払い続けなければならないからである。コンピュータ社会の巨大な化け物は、既にあちこちを徘徊し始めているようだ。今までの物流社会で力が付いたからと慢心していても、デジタル社会の怪談に怖れて身を震わすだけでは情けない。

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