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写真と文 石川文平

 

No.15「プリテック・ステージ」1996年5月号掲載

 

超高精彩モニター

■今、奈良が新しい。歴史の宝庫奈良で、時代の先端を走る研究が進められている。新世代高速通信網と呼ばれるデジタルネットワーク実験がそれである。その中に、ハイビジョンを超える超高精彩なモニターがあると聞いて、見学に行ったが、奈良の都は春の盛りであった。鹿は相変わらず人気者で、修学旅行生から鹿せんべいをもらってご機嫌である。しかもお土産屋さんでは”鹿のふん”まで売られている。鹿ちゃん人気もここまで来たかとよくよく見れば、お菓子の名前であった。このお土産、おいしそうに食べる人はいるのだろうか。■超高精彩モニターを見学に行く前にちょっと寄り道をして、新薬師寺の隣にある奈良市写真美術館を覗いた。ここは、写真で奈良を見つめ続けた、故入江泰吉氏の作品を展示している。氏の作品だけで10万点を越えるそうだが、この美術館が最もこだわっている点は、展示プリントの画質だそうである。美術館の中に入ると、正面に展示されたカラープリントの色の深さに圧倒される。長年印刷物の仕上がりにこだわってきたが、カラープリントの表現階調の深さには、かなわない事を思い知らされた。■超高精彩モニターを展示している”通信・情報機構 奈良リサーチセンター”は、京阪奈地域の子供達に人気がある。そこにはハイビジョンモニターを中心にした水族館やモニタートンネル、立体映像など好奇心をかきたてるアクアミュージアムが、研究開発ゾーンと併設されている。水族館のガラスの向こうで泳いでいる魚は、デジタル映像であるが、ふと、本物と錯覚する。ガラスを叩いても何の反応もない替りに、群れの一匹を指で押すと、その魚の情報を表示してくれる。デジタル水族館ならではの反応である。 ■超高精彩モニターSHDは、すでにお馴染みのハイビジョンの4倍、普通のテレビの16倍の密度のモニターである。現在医療関係で利用実験に取り組んでいるが、最近、印刷事業での実験が開始された。大量画像再現の最高技術と言える印刷分野での利用実験は、注目したい。更に驚くのは、このSHDの4倍の超々高精彩モニターが研究されているそうである。いずれ印刷校正は勿論、カラープリントにせまる色調を、モニターで表現出来る時代が来るのかも知れない。この技術を実用化して行く背景に高速デジタル通信がある。最近決まった世界規格、1秒間に150メガビット、公衆回線(電話)の数千倍のデータが送れる事を意味する。■大和路を歩いていて、ふと、入江泰吉氏の写真の風景に出会った。人の歩いた温もりを感じさせる草路の彼方に、数百年前の五重塔が見える。近年写真や印刷が、イメージ情報の伝達手段となったが、最近モニター画像がその仲間に加わった。それは、イメージ情報の伝達が、物流から解放される事を意味する。物流から情報流通へ、公衆回線を1車線道路と例えれば、従来の2000倍以上、”2000車線道路”の開通が、情報流通革命をもたらすのは真近であろう。

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