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修行の巻六

 

集中することにひたすら取り組んでいると、呼吸が浅くなる。私の場合は呼吸が短く浅く酸欠状態になるのではないかと思う程わずかの呼吸になっていることに気付いた。
3日目の朝は食欲がなかった。まだ先は長い。体調を整える意味で朝食を抜くことにした。りんごを一切れとお茶を飲みながらぼんやり辺りを見ていると、早くも食事を終えたあの金髪ヘアーのキンパチくんがタライの前で自分の食器を洗っていた。手が滑って食器がドボンとタライの中に落ちると、水がはねて足下の床が濡れた。慌てて雑巾を探したようだがキンパチくんの目には入らない場所にあった。あそこにあるよと教えたかったが我々は無言の行である。彼は濡れた床を気にしながら次の人に場所を譲るべく、食器洗いを続けていた。床が濡れているのを知っているのは(私と)キンパチくんだけである。床にこぼれた水は遠目に見ても気付きにくい。彼も注意を促したいのだが、声を出せない。キンパチくんは不自然に身体をねじりながらも濡れた床を自分の足でカバーしながら次の人に場所を譲ろうとしていた。いい奴だなと私は思った。私はさっき目にした雑巾を取りに行って彼の足下の床を拭いた。彼は少し驚いた顔で私を見た。ドンマイ、ドンマイ、そんな感じで意識を返した。キンパチくんの頭がペコリと下がった様に見えた。
朝食抜きは成功だったようで朝食後の瞑想に集中する事ができた。瞑想を始めていろいろな感覚が敏感になっていることに気付いた。会話をしないということにも要因があると思うが、これまで気にも止めなかった小さな花や虫に意識が動く。庭の隅の薮の中の小さな黄色い花にふと目が止まった。しばらくその花や葉を眺めていた。いい年をしたオヤジが庭の隅にしゃがんで黄色い花と語り合うの図は、はた目に見てもあまりカッコイイものではないのだろうが、普段の何倍か敏感に(神経質という意味ではなく)色々なものを感じ取れるようになっているのは確かであった。

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