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写真と文 石川文平

 

1994年10月

 

マルチメディア社会200X年コンファレンス考

■マルチメディアに関する国際的コンファレンスが、日本でも本格的に開催さ れた事はとても嬉しい。これまで私が参加したマルチメディア関連の国際コン ファレンスの中でもクオリティ―の高い内容であったと思う。講演者やパネラ ―の選択がタイムリ―なことと、若者層も含めた新しい情報を持った人達をう まく選んでいることもその大きな要因であろう。 ■興味をひいたパネラ―は何人もいたが、ロジャ―・フィドラ―氏と高城 剛 氏の話の内容に少し触れてみよう。フィドラ―氏の話の中で出てきた”ハンデ ィ―タブレット新聞”は当日出席していた全パネラ―が興奮し驚嘆したマルチ メディアのツ―ルその物であった。氏はアメリカの新聞社「ナイト・リッダ― 社」の情報デザイン研究所の所長であるが、マルチメディア時代の新聞の形” ハンディ―タブレット新聞”を我々に見せてくれた。全ての新聞がそうなるか どうかは別として、そのユニ―クな形状と機能は、こんなものが有れば便利だ ろうと思われるマルチメディアの一つの形を具体的に提示してくれている。B 4判程の大きさで、厚さは10mm程、重さは1Kg程度の薄いパネル状で、 全面が画面になっている。つまり、パネル状のコンピュ―タモニタ―を持ち歩 くイメ―ジである。モニタ―上をペンタッチ式にクリックすると読みたい画面 が拡大されたり、ム―ビ―が写し出されたりする。パネラ―として同席してい たNHKの高島氏が、「NHKでも同じタイプのフラットパネルTVを開発中 であるがコンパクト化が難しく、今回このプレゼンテ―ションに多少ショック を受けた」と語っていた。この”ハンディ―タブレット新聞”は、2年後に実 用化を目指しているそうであり、一般の人が考えているよりも早いテンポでマ ルチメディア化が進むであろうと述べている。 フィドラ―氏は、マルチメデ ィア時代の大量情報共有化にこそ、新聞の編集や掘り下げ方が個性と価値を創 り出すと述べており、「情報はブランドである」と言った言葉が印象的であっ た。 ■一方、高城 剛氏は今を時めく若手マルチメディアクリエ―タ―第一人者だ けあって、テンポの良いしゃべり口で明快に、近未来マルチメディア社会をう たいあげてくれた。氏の話の中には若い世代ならではの斬新な発想や切り口が 随処に見られ、ファミコン世代のマルチメディア感覚とはこう有るのかも知れ ないと考えさせられた。マルチメディアとは何かをあれこれ言い回すよりも、 氏の言う「マルチメディアは新しいテレビである」が簡潔に言いえているよう で妙に楽しい気持ちになれた。氏は「”デジタル化”ではなく”デジタル”に よって生活が変わる」とも言っている。デジタル化はこれからのリエンジニア リングに必要不可欠なものであるが、個人がもたらされるメリットはデジタル そのものによってであることの認識を強調していた。しかしながら、氏の言う 「デジタルは人間の生理である」に至っては、おじさん世代にはチトついて行 けない感覚であろう。高城氏のハイパ―感覚に心地良く耳を傾けていると「” インフォメ―ション”を日本語で”情報”と森 鴎外が作字したが、”情”と 言う単語の存在を鴎外は意味付けていたはずであるから、自分もこの情を”豊 かなもの”と解釈し、情にこだわった情報とは何かを課題にしている」と言う 言葉を聞いて、日本人の感性を大切にしたマルチメディアクリエ―タ―として 今後に活躍が期待できる一人だと感じた。 ■外国の講演者は質問時間を多目に取る人が多いが、このコンファレンスも例 外ではなかった。日本人はあまり質問をしないのが常であるが、この点につい ては例外で、外国人公演者に積極的に質問を投げかけ、しかも英語で流暢に質 問する人が多かった事に驚かされた。日本人が国際化して来た証拠であろう。 ■このコンファレンスを通して、マルチメディア社会の生活がどの様に変わる かが理解でき、その楽しさやメリットが十分得られる事も理解出来る。また産 業構造もどうやら大きく変化しそうだということも想像出来るのだが、果たし て、マルチメディア社会は現在の社会と比べて良い事ずくめなのだろうか、現 社会においても、コンピュ―タの持たらした功罪は一対の物として存在してい る。現在マルチメディアは意識改革の為の啓蒙期に当たるのであろう。啓蒙期 にはどんなシステムを普及させるにも良い事だけをアピ―ルするのが常である が、新聞社主催のコンファレンスとしては、クオリティ―の高さの中に、しっ かりと両側を見つめる目をもっと強調しても良かったのではないかと感じる。 ■マルチメディア社会は、益々国際化に拍車をかける。西欧文明に追い付け追 い越せを目標に努力して来た日本は既に目標を見失い始めた。日本人らしい感 性と個性的な文化の価値をもっと意識し、国際化に向けて、アイデンティティ ―と個性有る日本文化を育て行くべきではないだろうか。ハワ―ド・ラインゴ ―ルド氏が、このコンファレンスの中で言っていた「文化の違いを保存しなが ら、地球的新しい文化を創って行くべき」という言葉に、私も同感である。

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