文平の散文詩
散文詩
エッセー
ポレポレ

写真と文 石川文平

アフリカの朝はJambo(ジャンボ)の挨拶で始まる。
ジャンボはスワヒリ語で「お早う」「今日は」「今晩は」。挨拶はいつでもジャンボでOK、ハワイのアロハのような感覚で使える。スワヒリ語は日本語やハワイ語のように母音が比較的はっきりしているので、日本人にも覚え易いと思う。他に覚えたスワヒリ語はアサンテサーナ、ハクナマタータ、そしてポレポレなどである。アサンテサーナは「有難う」、ハクナマタータは「問題ない」「何とかなるさ」といった感じの意味で、フランス語のケセラセラといったところだろうか。このアバウトな感じが気に入ったせいか、キリマンジャロの旅もハクナマタータで通 してしまった。ポレポレは「ゆっくり」とか「のんびり」といった意味である。
ヘミングウエイの「キリマンジャロの雪」に憧れてキリマンジャロ登山の誘いに二つ返事で乗った。キリマンジャロは富士山を大きくした程の山で、登るには何の技術もいらないと聞いた。確かに技術はいらなかったが高度順化に耐える体力は必要だった。キリマンジャロは標高5890mの死火山。アフリカ大陸の最高峰であり、赤道直下でありながら山頂に雪をたたえる。山頂の氷河の中には豹が氷り漬けになっているという伝説もある。豹が氷り漬け、ひょうが氷り、氷河の氷り・・の意味じゃないかと言う人もいるが、これではあまりにも日本人的駄 洒落発想で夢がなさ過ぎる。豹がいるかいないかは見て来るしかない。2001年9月3日オランダ経由でアフリカに出発した。
キリマンジャロに登るには、主に西側からのルートと東側からのルートが有るようだが、我々が登った東ルートが施設も充実しており一般 的なようだ。東ルートの登山口は標高1860mのマラングゲートで、そこ迄は車で行ける。一日目は標高2700mのマンダラハットまでジャングルコースを歩く。鬱蒼としたジャングルの中に細い道が続く。南方特有の鳥の声や猿など動物の声が時々聞こえて来る。まさにアフリカのジャングル真ただ中である。ターザンの映画に出て来るジャングルとそっくりのシチュエーションで、太い蔦が大木の上から垂れ下がっていたりする。道端には可愛い黄色や白の花も咲いていて目を楽しませてくれる。ターザンのイメージからライオンはジャングルに居るのかと思っていたが、間違いだという事をこの旅で知った。ターザンばかりでなく音楽でも、「ライオンは寝ている」というヒット曲があるが、確か、今夜はライオンがジャングルで寝ているという曲だったと思う。アフリカのジャングルにライオンがいるという先入観があるくらいだから、キリマンジャロの山頂に豹がいてもおかしくないのかもしれない。山頂まで行った豹は、カモメでいえばジョナサンなのだろう。「カモメのジョナサン」も他のカモメと違ったチャレンジをする話だったが、鳥でも動物でも枠から外れる奴が必ずいるそうだ。これは日本野鳥の会の研究室の人から聞いた話だが、そうすることでその種の生活環境の可能性を拡げているのだそうだ。人間でいえば冒険家と称する人たちはこの部類に属するのかもしれない。